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血栓症の臨床(図解)21:アスピリン、TXA2、PGI2

血栓症の臨床(図解)シリーズ
・血栓症の基礎:1234567891011121314
・抗血栓療法:15161718192021



前の記事で書かせていただいたように、「アスピリンジレンマ」は、トロンボキサンA2(TXA2)という悪玉を抑えるのみでなく、プロスタサイクリン(PGI2)という善玉まで抑えてしまいまう現象です。

ところが、アスピリンを少量で用いますと、より選択的に血小板に作用するようになります。
つまり、悪玉をより選択的に抑えてくれることが知られています。

上図は、管理人が20年以上前に検討した結果です。

アスピリン(アセチルサリチル酸:ASA)40mg/日という、ごく少量のアスピリンを健常人(管理人を含む)に内服してもらいました。
そして、その後のTXB2(TXA2の代謝産物)と、6-keto-PGF1α(PGI2の代謝産物)の変動を3週間まで追跡しました。

アスピリンの内服は、2週間です。

そうしますと、こんなに少量のアスピリンであるにもかかわらず、悪玉のTXA2の代謝産物は、前値の10%未満にまで低下しました。
一方、善玉のPGI2の代謝産物ですが、やはり8割程度に低下しています。

わずか40mg/日という少量のアスピリンであっても、完全にアスピリンジレンマを回避していないことになります。

当時、もっと少量のアスピリンの方が良いのではないかと思ったくらいです。



(続く)


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  • 2017.09.26 Tuesday
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コメント
先生のブログを見つけまして、とてもわかりやすいと思いました。

長年、妊娠せず、したとしても化学流産が数度あるだけで、子供を授かれないまま病院を渡り歩き、今年になりようやく家内の凝固第XII因子の活性が62%とやや低いことが分かりました。これが原因なのか、はっきりしたことはいえないのですが、これ以外に原因がないので、困っています。そこで以下、質問させて下さい。

1)第12因子は、内因系の凝固因子の端緒となるものであるのは勉強しましたが、不足によって出血傾向とならずに血栓傾向となる機序は、よく分かっていないのでしょうか。

2)第12因子の不足は、抗リン脂質抗体とは異なるようですが、やはり低用量のアスピリンが治療の第1選択のようです。このため医師から高温期からのバファリンA81の服用を指導されています。ただ素人判断として、月経後の子宮内膜が増殖する時期から服用して、微少な血栓をできにくくしてあげることで、内膜の隅々まで血管の増殖を促すことができそうな気もします。血流と血管の増殖の観点から、着床しやすい内膜形成のために、月経後からの服用の方が有効と考えられますか。

3)先生のアスピリンジレンマの説明を拝見しますと、バファリンA81でもまだ多く、半錠(40mg)で十分効果的との印象を受けます。お薬は少ないほうが良いと思いますので、実際に半量の40mgで効果が期待できるものなのでしょうか。

上記の点、もし教えていただけましたらとてもありがたく存じます。
  • こば
  • 2014/05/28 7:32 PM
こばさん、この度はご訪問ありがとうございます。

「凝固第XII因子の活性が62%とやや低い」
凝固第XII因子は日本人では低い人が多い印象を持っています。
正常と言っても良いレベルだと思います。
これが流産の原因とは思いにくいというのが正直なところです。

「不足によって出血傾向とならずに血栓傾向となる機序は、よく分かっていないのでしょうか」
間違ったことを書いてしまうといけませんので、回答は保留させていただけるでしょうか。
いろんな議論があったと思います。

「医師から高温期からのバファリンA81の服用を指導されています」
流産の原因が不明であったとしても、アスピリンは試みて良い治療にように感じます。

いつから服用が良いかはいろんな議論があると思いますが、抗リン脂質抗体症候群(APS)の患者さんは妊娠希望の場合でも妊娠と関係なく永続的に内服している方は多いです。

「バファリンA81でもまだ多く、半錠(40mg)で十分効果的との印象を受けます」
これは結論が出ていませんが、81〜100mgで内服している方が多いです。
40mgと81mgの比較試験はありませんので、答えはないと思います。
バファリンA81で問題ないと思います。

以上、分かる範囲内で書かせていただきましたが、回答になっていますでしょうか。
  • あーちゃん
  • 2014/05/28 7:58 PM
ご教示を有り難うございました。こんなに早くお返事をいただきまして、感謝の気持ちでいっぱいです。

検査機関によって基準値が異なるようで、私たちが受けた保険科学研究所ではこの値を70-150として、報告書にLマークがついて来ました。何もできないままよりはとの思いもあり、結果、バファリン服用となりました。ただ、それだけでは私たちは分からないままでしたので、少し論文を探しました。

杉・牧野(2005)では、「191人の不育症患者をスクリーニングしたところ、34人(17.8%)が第XII因子活性60%未満」、「正常対照群60人中第XII因子活性60%未満は1人」との結果で、同じ研究グループだと思いますが、Matsubayashi et al.(2008)では、反復の体外受精失敗患者群(第XII因子活性の中央値79.5%)は、不育患者群(同92%)、正常群(献体のボランティア群;同109%)と比較して、統計的に有意に低いとの結果が得られているようです。

これらと一つの検査機関の数字を比較することはできないことは分かるのですが、高くはない数字から、第XII因子の自己抗体があって、何か良くないことが起きている可能性もあるのかしらと思っている次第です。

またアスピリンについては、Sugiura (2001)で、XII因子低下症例に40mg/dayを投与した群としない群の流産率(1/8と4/5ですので症例が少ないのですが)のオッズ比が28となり、40mg/dでも効果が期待できるのかなと思いながら先生のブログを見つけて、納得しかけたのですが、比較がないとのことは理解しました。

いろいろな検査をしてきましたが器質的異常やホルモン値に異常値がないので、凝固異常に原因を求めながらバファリンを服用することしか、もうできることはありません。家内と話し合いながら、もうちょっとだけがんばってみたいと思います。有り難うございました。


参考文献
杉俊隆、牧野恒久(2005)「わが教室における不育症対策」『産婦人科治療』91-2. pp. 199 - 204.

Matsubayashi,H., T.Sugi, T.Suzuki, N.Uchida, H.Atsumi, S.Izumi and M.Mikami (2008), "Decreased Factor XII Activity is Assocoated with Recurrent IVF-ET Failure", American Journal of Reproductive Immunoligy 59, pp. 316 - 322.

Sugiura, M, Y.Iinuma, K.Aoki, K.Katano, Y.Ozaki and K.Suzumori (2001), "Low-dose Aspirin is Effective for Treatment of Recurrent Miscarriage in Patients with Decreased Coagulation Factor XII", Fertility and Sterility 76-1, pp. 203 - 204.
  • こば
  • 2014/05/29 4:50 PM
こばさん、コメントありがとうございます。
大変に参考になりました。

XII因子活性につきましては、想定試薬が違うせいかもしれませんが、健常人でも低い方は大勢おられるように感じています。
  • あーちゃん
  • 2014/05/29 8:43 PM
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