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血栓症の臨床(図解)58:深部静脈血栓症と肺塞栓の臨床症状

血栓症の臨床(図解)シリーズ
・血栓症の基礎:1234567891011121314
・抗血栓療法:15161718192021222324252627
・アスピリン vs. ワーファリン:
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・深部静脈血栓症/肺塞栓(DVT/PE):
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深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓(PE)の臨床症状は、典型例から非典型例までいろいろです。

DVT
1.疼痛
2.腫脹(末梢まで腫脹)
3.発赤
4.熱感
5.Homan’s sign(足の背屈で腓腹部に疼痛)

PE
1.突発的な胸痛、呼吸困難
2.血痰、喀血
3.ショック
4.意識消失
5.無症状も少なくない

典型例では、上記のような臨床症状がみられます。
ただし、DVT、PEともに、全く症状がなく検査(下肢静脈エコー、胸部造影CTなど)によって初めて分かるということも少なくありません。

ただし、臨床症状がないから大丈夫かと言いますと、そういう訳ではありません。

たとえばDVTの場合、下肢の腫脹のないDVTの方が、血流によってかえって血栓が遊離してPEを起こしやすいという考え方もあるのです。



(続く)


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  • 2017.11.11 Saturday
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  • 20:05
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コメント
仕事でヨーロッパに住んでおりますが、当地の病院の対応についてご意見をうかがいたいと思います。医療システムも日本と違うところがあるでしょうから、一般論としてお答えいただければと思います。

今年の2月1日、家内を肺梗塞で亡くしました。42歳でした。経緯は次の通りです。なお、私達は不妊治療を受けており、流れてしまった子供もそれで授かったものです。
12月1日:胚移植。
12月14日:妊娠検査陽性。
1月8日:病院で流産を確認。その後しばらく出血が止まらず、体調がすぐれない状態が続く。
1月17日:状態が急に悪化。この日以降は台所から居間に移動するだけで肩で息をするような状態になる。
1月20日:かかりつけの町医者で、貧血と診断される。増血剤を貰う。
1月26日:かかりつけの町医者で、貧血の治療として鉄分補給の注射を受ける。
1月27日:症状が回復しないので大学病院(流産を確認したのと同じ病院)の救急に行く。血液と尿検査。エコー、触診で子宮内の状態を確認。体調不良の原因は貧血だが既に適切な処置が取られているとして、それ以上の検査、治療は行わなかった。
1月31日:以前から予定していた通り、家内ひとりで日本へ向けて出発。体調は相変わらずだったが、日本の病院でもっと即効性のある貧血の治療が受けられることも期待していた。
2月1日:成田着。空港内は車椅子を借りて移動。リムジンバスには自力で乗ったが、バスを降りた直後に倒れ、救急車で運ばれた先の病院で死亡。

私達は血栓症や肺塞栓についてほとんど何も知らず、診断されたままに貧血だと思っておりました。しかし後から考えると、1月17日の時点で肺塞栓が始まっていたように思われます。検死を担当した医師も、そのように話していました。
うかがいたいのは、1月27日の大学病院で、これに気付くことはできなかったのかということです。医師が知ることのできたのは、次のようなことだったと思います。
1.IVFで妊娠した後、流産したばかりで、出血が続いていた
2.受診時点では子宮内の残存物はなくなっており、出血もおさまってきていた
3.町医者から貧血という診断を受け、薬や鉄分注射も受けている
4.血液検査の結果から、貧血は既に治っていると判断された
5.台所から居間に移動するだけで息が切れる
6.脈拍が速い(受診時点で122)

担当した医師の上司に当たる教授からは、産婦人科医がこの情報から深部静脈血栓症や肺塞栓の可能性に気付くのは難しいと言われました。5については医師の残した記録に記述がなく、私達が伝えなかったということはありえないので、重要だとは思わずに聞き流してしまったものと思います。
日本で検死をした医師も、貧血だと思って診ていたら、気が付くのは難しかっただろうと言われました。
しかし、USAで医療関係の仕事に従事している友人からは、DVTやPEを疑って当然の状況であり、そうしなかったのは医師の手落ちであり怠慢である、職場の医師や看護婦もみな同じ意見だと、聞かされました。

治りかけの貧血だからそれ以上の治療も検査も必要ない、という判断は、循環器系の専門ではない産婦人科医としてはやむをえなかったのでしょうか?
それとも産婦人科医でも当然心得ておくべきリスクであり、それを見落とすのは手落ちであると言えるものなのでしょうか?

また、流産による出血が長引いてそこで血栓が形成されたのでは、と教授に聞いてみたところ、出血と血栓形成の間の因果関係は証明されておらず、出血が長引いていたからといって血栓のリスクが増していると予見することはできなかった、実際にその血栓が子宮から来たものかどうかを言うのも難しい、というものでした。
このコメントは正しいんでしょうか?
  • tetsu
  • 2010/04/03 8:39 PM
Tetsuさん、この度はご訪問ありがとうございます。
お若い奥様の突然のできごとで、心中お察し申し上げます。

肺塞栓(pulmonary embolism)は、突然死の原因疾患の一つとして知られています。マスコミではエコノミークラス症候群として報道されることもあります。日本では、サッカーの高原選手がなった病気としても有名になりました。なお、飛行機のエコノミークラスでなくても、飛行機に搭乗しますとこの病気を発症しやすくなるために、医学的にはロングフライト血栓症と言う方が正しいという指摘もあります。

また、新潟中越大震災の際に、車中泊の人(下肢をあまり動かせない環境になる)で、この病気のため命をおとされた方が何人もおられます。そのため、その後の震災では車中泊をしないようにとの啓蒙がなされています。

さて、不妊治療のために肺塞栓を起こしやすくなるかどうかですが、申し訳ございませんが、私にはこの知識があまりありません。可能性としてホルモン治療を併用していれば、血栓症を起こしやすくなるかも知れませんが、充分な知識を持ち合わせておりません。

貧血や、出血と肺塞栓との関係ですが、通常は関係ないと思います。

書かれている内容の中で、「1月17日:状態が急に悪化。肩で息をする。」が確かに気になります。肺塞栓は突然症状がみられるようになることがあります(症状がないにもかかわらず検査をして初めて分かる肺塞栓もありますが)。

この症状で肺塞栓を疑うかどうかは、主治医の専門領域が何かであるかにも依存すると思います。肺塞栓の診療に精通している医師であれば疑うと思いますが、産婦人科医がこの病気を疑うのは困難かも知れません。

ただし、産婦人科医が「1月17日:状態が急に悪化。肩で息をする。」の原因が産婦人科的には説明できないため、専門医に紹介するという選択肢はあったかも知れません。

もしこの時に、造影CT (肺塞栓の有無をチェック)、Dダイマーなどの血液検査、下肢静脈エコーなどがなされていれば、診断に到達できた可能性があります。

また、ロングフライトがこの病気を増悪させた可能性もあります。「リムジンバスには自力で乗ったが、バスを降りた直後に倒れ」というのは、ロングフライト血栓症でみられる症状の出方です。

新潟中越大震災の際も、自動車から出た直後に発症するパターンが多かったことが知られています。これは、車中泊の狭い環境で下肢をあまりうごかさない状況(このため、下肢の筋肉ポンプがはたらかず下肢静脈の淀みをきたしやすくなり血栓を形成しやすくなる)から、歩くことによって一気に下肢の筋肉ポンプが働き下肢に形成されていた血栓を肺に飛ばし、肺塞栓となるためです。

この病気は手術後(特に下肢の整形外科手術後)に発症して院内での突然死の原因にもなりうることも知られています。これに対して、術後の肺塞栓を予防するための治療薬が最近日本でも登場しました。

以上、充分な回答になっていないかも知れませんが、分かる範囲内で書かせていただきました。

奥様のご冥福を心からお祈り申し上げます。
  • あーちゃん
  • 2010/04/04 7:27 AM
お忙しいでしょうにこんなに早くご回答下さって、ありがとうございます。次の2点に絞って、もう一度、質問させて下さい。

流産による出血と、血栓のリスクの間に、相関関係はないのでしょうか?
記事を拝読しますに、出血に対する止血作用と、血栓を形成する作用は、基本的に同じ仕組みであると書かれているように思われます。
家内の場合、流産による出血が2週間以上続いておりましたが、この出血を抑えるためにその「仕組み」が発動して、ちょっと頑張りすぎて、血栓まで作ってしまった、ということはないのでしょうか?
動くのがおっくうにはなっていましたが寝たきりというわけではありませんでしたし、足の痛みなども訴えておりませんでした。血栓は、流産が引き金となって子宮近辺で形成されたのではないかと思うのですが、ありえることでしょうか?

「血栓症の臨床(図解)70」で、DVTの危険因子のひとつとして、妊娠を上げておられますね。
家内の場合、12月1日に胚移植を行い、1月8日に流産が確認(胎嚢はあるが中は空っぽ)されたわけですが、妊娠そのものは空振りでも、体の妊娠状態はしばらくは継続するのではないかと思います。
このような場合も、妊娠によってDVTやPEのリスクが高くなっていたと思われますか?それともこのような初期の段階ではまだ、止血因子の上昇などのDVTやPEのリスクに影響するような変化はないと思われますか?
もし既にリスクが高くなっていたとしたら、それは産婦人科医として当然心得ておくべき知識と言えるでしょうか?

ご専門の分野を逸脱した質問になっているかもしれません。おわかりになる範囲でお答えいただければ結構です。よろしくお願い致します。
  • tetsu
  • 2010/04/04 11:27 PM
Tetsuさん、コメントありがとうございます。

出血時には止血機序が強くなりすぎて、血栓症になりやすくなるかどうかに関してのご質問ですが、少なくとも直接的な関係はないと思います。

ただし、間接的にはいくつかの関連は想定されます。
たとえば、出血が強いために臥床時間が長くなったような場合、出血の原因が播種性血管内凝固症候群(DIC)であった場合(DICでは血小板数が低下します)などです。

また、凝固活性化状態がみられる時に、トラネキサム酸(tranexamic acid;日本での商品名はトランサミン)という止血剤を使用しますと、血栓症を誘発する可能性があります。

妊娠は血栓症のリスクになることが知られていますが、主として以下の2点がその理由と考えられています。

1) 胎児によって下大静脈が圧迫されること。
2) 妊娠後期にかけて、止血因子濃度が上昇すること。

換言いたしますと妊娠初期では、少なくとも明らかな血栓傾向にはなっていないと考えられます。

ただし、例外があります。
抗リン脂質抗体症候群(この病気は流産の原因になります。不妊ではなく。)などの血栓性素因があらかじめあった場合には、妊娠初期であっても血栓症を発症しやすくなることがあります。

以上、分かる範囲内で書かせていただきましたが、回答になっていますでしょうか。
  • あーちゃん
  • 2010/04/05 8:11 AM
お忙しい中、貴重な情報を無償で、しかも間髪を置かずに提供していただき、ほんとうにありがとうございます。他の記事も拝見して勉強させていただいております。
患者を診ずに判断するのは極めて難しいとは思いますが、これまでのご回答から判断するに、先生のお考えでは「流産による出血が引き金となって子宮近辺で血栓が形成された」可能性は低いと言って良いでしょうか?

家内の場合、息が苦しくなる前も体調はすぐれませんでしたが、床に就いていたわけではありませんし、水分も十分に摂っていたと思います。1月16日には散歩に出てある程度の距離を歩いてもいましたので、いわゆるロングフライト症候群には当たらないと思います。
2回続けての流産でしたので、私達は子宮筋腫が原因だと考えておりましたが、実は抗リン脂質抗体症候群だったのかもしれません。ただ、今となっては確かめようがありませんよね?アスピリンは、はっきりとは覚えておりませんが、服用していたように思います。
流産の出血と直接の関係がなかったとしたら、何がきっかけになってどこで血栓ができたのか、抗リン脂質抗体症候群以外にどんな可能性が考えられるでしょうか?
  • tetsu
  • 2010/04/06 12:16 AM
Tetsuさん、ご質問ありがとうございます。

「流産による出血が引き金となって子宮近辺で血栓が形成された」可能性ですが、少なくとも直接的な関連はないように感じます。ただし、間接的な関連の可能性は、既に書かせていただいた通りです。

アスピリンを内服されていたということは、主治医も抗リン脂質抗体症候群を想定されていた(あるいは否定できないと考えていた)のかも知れません。

肺塞栓を発症する場合の血栓の最初の形成場所ですが、最も多いのは下肢の静脈(下肢の深部静脈血栓症)です。

深部静脈血栓症は、日本人には少ないのではないかと言われてきた過去がありますが、どうもそんなことはないようです。欧米人と変わりないのではないかと思っています。ひょっとしたら、この病気であるにも関わらず、見過ごされていることもあるかも知れません。


深部静脈血栓症の原因は、はっきり分からないこともあります。私の個人的な経験では、原因を特定できるのは半数くらいです。
原因が判明する場合には、以下の記事で書かれているような疾患があります。その中でも、抗リン脂質抗体症候群は最も多い疾患の一つです。
特に、2回の流産の既往があるとしますと、ますます疑いたくなります。
http://aachan1219.jugem.jp/?eid=4490
http://aachan1219.jugem.jp/?eid=4491

以上、分かる範囲内で書かせていただきましたが、回答になっていますでしょうか。
  • あーちゃん
  • 2010/04/06 7:27 AM
お礼が遅くなりました。丁寧なご回答、ありがとうございました。ご見解、参考にさせていただきます。
  • tetsu
  • 2010/04/12 5:20 AM
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