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血栓症の臨床(図解)63:深部静脈血栓症&肺塞栓の治療

血栓症の臨床(図解)シリーズ
・血栓症の基礎:1234567891011121314
・抗血栓療法:15161718192021222324252627
・アスピリン vs. ワーファリン:
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・深部静脈血栓症/肺塞栓(DVT/PE):
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静脈血栓塞栓症(VTE)、すなわち深部静脈血栓症(DVT)&肺塞栓(PE)の治療です。上図では、一応、網羅的に列挙しましたが、何と言っても基本は抗凝固虜法です。

急性期:未分画ヘパリン、低分子ヘパリン(商品名:フラグミン)、ダナパロイド(商品名:オルガラン)から選択します。

●未分画ヘパリン10,000~20,000単位/24時間くらいで投与することが多いです。APTTを〜倍に延長させるように(たとえば2倍に延長させるように)という投与方法が欧米の教科書では推奨されていますが、管理人はこの方法には疑問を感じています。日本人で、APTT2倍にも延長させるような投与方法はむしろ出血の副作用を増強させる懸念の方が大きいと考えています。むしろ、APTTがあまり延長させないようにヘパリンを投与する方が上手な投与方法であることが多いと考えています。

そもそもAPTTが延長することとヘパリンが効いているかどうかは無関係です。ヘパリンの効果は、FDP、Dダイマー、TATなどで評価すべきでしょう。

ただし、このあたりの考え方は専門家の間でも意見が分かれるところです。管理人のブログ(日記)としての記載ということでお許しいただければと思います。

なお、特にICUで管理されている患者様では、動脈ラインから採血されることがしばしばあると思いますが、動脈ラインのヘパリンがほんのわずかでも混入しますと、APTTは著しく延長しますので、注意が必要です。

●フラグミン:低分子ヘパリンの中のフラグミンは、DICにしか保険収載されていません。DVT/PEには保険が認可されていないのですが、未分画ヘパリンよりもいろんな点ですぐれた薬剤です。本来であれば、欧米でのようにDVT/PEの治療にも低分子ヘパリンを使用したいところです。なお、クレキサンという低分子ヘパリンは、整形外科手術後のDVT予防目的に使用することができますが、残念ながら治療目的には使用できません。

フラグミンを使用可能な場合には、75単位/kg/24時間で使用します(通常4,000〜5,000単位/24時間くらいの使用量になります)。未分画ヘパリンとは単位の使い方が違いますので注意が必要です。

●オルガラン:これも優れた薬剤ですが、残念ながら日本ではDICにのみ保険収載されています。この薬剤は半減期が20時間と長いために、1日2回の静脈注射のみで持続した効果を期待できるのが魅力です。そのため、24時間持続点滴で患者様を拘束する必要がありません。もし本薬を使用可能な場合は、DICに準じて、1,250単位を、1日2回静脈注射します。


慢性期:ワーファリン治療を行います。

2.の線溶療法は、別途記事にさせていただきます。
3.の下大静脈フィルターは、ごく限られた適応です(上図参照)。
4.の弾性ストッキングはむしろ予防としての意義の方が大きいです。
5.の手術が必要になることは、極めて例外的です。おそらく1%もないと思います。



(続く)


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  • 2017.11.11 Saturday
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  • 20:45
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コメント
ワーファリン治療失敗例について質問をさせて下さい。
私は、大学病院の薬剤師をしています。

昨年、深部静脈血栓症にてワーファリン治療が開始になった肺癌の方なのですが、同時に化学療法も開始になりました。
INRは2前後でコントロールされていたのですが、今年に入り、血栓が増加してきたため、ヘパリンを開始いたしました。また、ワーファリンの目標値も2−3とし、2.5前後に保たれ、血栓も無くなったため、ヘパリンをoffにして10日後、CT上明らかな血栓が増加していました。肺塞栓症と診断されています。
ちなみに下大静脈フィルターをヘパリン開始数日後に入れて、10日後くらいに取る予定だったのですが、血栓の増加のため取る方が危険とのことで、現在も入ったままになってます。
現在は、ヘパリンを再開し入院中です。
医師はワーファリン治療失敗例とのことでヘパリンによる治療に移行しようとしています。
アメリカなどでは、外来用に低分子へパリンの自己注射などが、行われるとのことですが、日本では適応が通っていないために使えないんですよね?
外来で通院できれば、外来に移行したいのですが、日本ではどのような対応をしているのでしょうか。
ちなみに服用薬はファモチジンくらいで、
プロテインCは正常、抗カルジオリピン抗体は測定中です。

よろしくお願い致します。
  • 2009/03/08 9:50 PM
この度はご訪問ありがとうございます。

ワーファリンではコントロールしきれない症例ということで大変難しい症例です。肺癌の病状がどの程度なのか分かりませんが、ワーファリンでコントロールできない血栓傾向が存在していると言うことになりますので、進行例かも知れません。

あるいは、播種性血管内凝固症候群(DIC)の合併がある可能性もあります。DICに対しては、ワーファリンは全く無効です。

さて、ヘパリン治療は原則として入院中にのみ行う治療です。ヘパリンの半減期が0.5〜1時間ということで、24時間持続点滴が原則になります。ただし、ヘパリン皮下注で、1日2〜3回投与するという方法も考えられない訳ではありません(皮下注によって有効血中濃度以上の時間を多少延長させることができます)。しかし、今回の場合はかなり血栓傾向が強いようですので、ヘパリン皮下注では不十分な可能性が高いのではないかと思います。

大変悩ましいですが、私でしたら外来移行を考える場合にはオルガラン(半減期20時間と長いヘパリン類です)1日1回投与でコントロールを試みるような気がします。

なお、ご指摘の通り、低分子へパリンの自己注射は日本では適応が通っていません。ただし、保険適応を考慮しない場合であっても、低分子へパリンの半減期は2〜4時間です。オルガランの方がなお良いのではないかと、個人的には思います。

十分なお答えにならずすいません。分かる範囲内で回答させていただきました。
  • あーちゃん
  • 2009/03/09 6:37 PM
返答ありがとうございます。
又、詳しいアドバイスありがとうございます。
大変参考になりました。
先生とも相談し、患者さんにとって最善となるよう進めていきたいと思います。
ありがとうございました。
  • kisa
  • 2009/03/09 11:01 PM
以前質問させていただいたヤスミンともうします。 また先生にアドバイスを頂きたい事があります。 私はアメリカでDVT持ちの妊婦でしたが、今年の4月に無事出産しまして、産後6週間まではロバノックス(enoxaparin)を自己注射で治療をしていました。 医者が私の血栓の原因は妊娠だろうからこれからの再発の可能性は低そうとのことでその後は完全に何の治療もしていませんでした。 まだ左足に血栓はありますが、1年以上経った今も増えも、減りもしない状態のようです。 その後、転勤になり、別の病院、医者にかかることになり、先日その医者に血栓があるならすぐにロバノックスとクマディン(ワーファリン?)を始めましょうと言われました。 2週間それで様子見た後にクマディンのみに切り替えて半年やってみたらもしかしたら血栓が溶けるかもと言っていました。 この2つの薬は同じようなお薬じゃないのでしょうか。 医者はクマディンだけを使うと余計に血が固まりやすくなるからと言っていました。 そうなんでしょうか。 もし、半年間クマディンを使って血栓が消えない場合は生涯のみ続ける可能性もありますと言われました。 先生はどう思いますか。 
  • ヤスミン
  • 2009/11/11 11:58 PM
ヤスミンさん、この度もご訪問ありがとうございます。

専門家の間でも意見が分かれるところです。

クマディン(日本ではワーファリン)は、ビタミンKの拮抗薬です。ビタミンK依存性凝固因子を低下させることで、いわゆる血液をさらさらにします。ただし、ビタミンK依存性の凝固因子のみでなく、ビタミンK依存性の凝固阻止因子(特にプロテインCが問題になります)も低下させます。

しかも、プロテインCは半減期が短いために、ワーファリン治療開始に伴い速やかに低下してしまいます。そのために、一時的にかえって血栓ができやすい状況になるという考え方(懸念)があります。ワーファリン内服してある程度経過すればこの懸念はなくなります。ですから、ワーファリン開始してしばらくの間のみロバノックス(enoxaparin)を併用しましょうという見解だと思います。

しかし、日本ではワーファリン開始時点で、enoxaparinなどを併用することはまずありません。例外としてこのような併用治療をするのは、日本では先天性プロテインC欠損症(まれな疾患です)の方のみです。先天性プロテインC欠損症の方は、もともとプロテインCが低下していますので、ワーファリン開始することで一時的に強い血栓傾向になるためです。参考:電撃性紫斑病(purpura fulminans)

血栓が溶解するかどうかは、血栓の新しさにもよります。たとえば、1年以上経過している場合には溶解するのは困難ではないかと思います。

さて、ワーファリンを使用するかどうかで、前医と、現在の主治医の間に見解の相違がある点ですが、確かに意見が分かれそうです。
私自身は、血栓が残存しているのであれば、その部分を核にして血栓が拡大することを阻止するためにワーファリンを内服していただくように思いますが、日本でもワーファリン不要という見解の医師もいると思います。

なお、ワーファリンには開催奇形性の副作用がありますので、挙児希望の場合には内服できないことになります。

以上、分かる範囲内で書かせていただきましたが、ご参考になっているでしょうか。
  • あーちゃん
  • 2009/11/12 9:35 AM
先生アドバイスありがとうございます。 また投薬が始まると思うと気が重かったのですが、先生のお返事を読んで少し気持ちが落ち着いてきました。 しばらく頑張ってみることにします。 それともう一つ、授乳していますが赤ちゃんに影響ないでしょうか。
  • ヤスミン
  • 2009/11/12 4:42 PM
母乳中にもわずかではあるもののワーファリンが移行するという文献があります。

移行する量がわずかであるため、おそらく問題にならないものとされています。ただし、哺乳量が多い場合には、乳児がビタミンK欠乏症になる可能性は完全に0%ではないかも知れません。

主治医と相談の上、必要があれば乳児にビタミンKシロップをのませた方が良いかも知れません。

このあたりは小児科の先生の方が詳しいのではないかと思います。

私は内科ですので、手元の文献で確認させていただきました。
  • あーちゃん
  • 2009/11/13 9:03 AM
いつも丁寧なアドバイスをありがとうございます。 今度小児科の先生に聞いてみます。 
  • ヤスミン
  • 2009/11/14 9:19 PM
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