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血栓症の臨床(図解)81:抗リン脂質抗体症候群の治療(習慣性流産)

血栓症の臨床(図解)シリーズ
・血栓症の基礎:1234567891011121314
・抗血栓療法:15161718192021222324252627
・アスピリン vs. ワーファリン:
28293031323334353637383940
414243444546
・深部静脈血栓症/肺塞栓(DVT/PE):
4748495051525354555657585960
616263646566676869707172
・抗リン脂質抗体症候群(APS):
737475767778798081



抗リン脂質抗体症候群(APS)の症状として重要なのは、血栓症(動脈血栓症・静脈血栓症)とともに、不育症(習慣性流産)です。

女性の方では、不育症(習慣性流産)をきっかけに、抗リン脂質抗体症候群の診断がなされることが大変多いです。換言しますと、不育症(習慣性流産)の患者様を拝見しましたら、必ず抗リン脂質抗体症候群ではないかどうかの検査が必要です。つまり、抗カルジオリピン抗体と、ループスアンチコアグラントの検査が必要です。

さて、抗リン脂質抗体症候群の治療ですが、実は既に記事にさせていただいています(抗リン脂質抗体症候群のリンク集 ←リンク)。

今回は、不育症(習慣性流産)の治療につきまして、さらに詳しく確認しておきたいと思います。
抗リン脂質抗体症候群の流産の原因は、胎盤に血栓ができることが大きな原因の一つと考えられていますので、抗血栓療法が基本になります。

1)アスピリンの内服:
抗血小板療法です。抗血小板薬には他にも多数ありますが、催奇形性の問題がクリアされているのは、アスピリンのみです。
他の抗血小板薬につきましても、おそらく問題ないのではないかと思われるお薬がありますが、しかし、完全な保証がない現在は使いにくいです。
おそらく、何年後(何十年後?)かには他の抗血小板薬が妊婦に対して使われるようになっているのではないかと思っています(期待しています)。

アスピリンは通常81〜100mg/日で、内服いたします。
妊娠判明前から内服していただくことが多いです。出産前にはアスピリン内服を中止しますが、どの時点で中止するかにつきましては、専門家の間でも意見が分かれるようです。管理人は、出産予定の1週間前位に内服中止していただくことが多いです。しかし、もっと早く中止する臨床家もおられるようです。


2)ヘパリン皮下注:
抗凝固療法の注射薬です。ヘパリンにも催奇形性の問題がありません。
妊娠判明後にヘパリン皮下注を追加することがあります。アスピリン内服に、ヘパリン皮下注も追加するかどうかは、患者様の事情によって異なってきます。
●流産歴が、何回か(1回か、2回か、3回以上かなど)。
●アスピリン治療歴があるか、ないか。
●年齢が、何歳か(20歳代前半か、20歳代後半か、30歳代前半か、30歳代後半かなど)。
●抗リン脂質抗体症候群の病勢が強いか、弱いか。
●出血性素因があるかどうか。
●お子さんがおられるか、おられないか。
上記を考慮して、慎重に総合判断します(患者様と相談して最終決定します)。

ヘパリンの皮下注には、カプロシンという商品名の高濃度ヘパリンが愛用されます(注射量が少なくなり患者様の負担が少ないため)。通常5,000単位を、1日2回皮下注します。出産前日まで投与することが多いです。
ヘパリンは経静脈投与の場合には半減期は0.5〜1時間、皮下注の場合は数時間程度です。ですから、皮下注で投与している場合には出産半日前から投与中止しても良いのです。

なお、大事をとって出産1週間前に入院していただき、1週間ヘパリンの持続点滴をすることもありますが、抗リン脂質抗体症候群の病勢が強いなど特別な例です。

また、出産後にも深部静脈血栓症を合併しやすいために、通常ヘパリンを使用して発症予防します。


3)ワーファリン内服:
このお薬は、抗凝固療法の内服薬です。催奇形性の副作用があるため、挙児希望の女性には使用できません。
ワーファリンはビタミンK拮抗薬なのですが、オステオカルシンという骨代謝と関連したビタミンK依存性蛋白の活性を抑制してしまうために、骨(軟骨)形成不全などの催奇形性の問題があります。
妊娠時期によっては、ワーファリン内服は可能という考えもないわけではないのですが、管理人はその経験がありません。


4)柴苓湯:
抗リン脂質抗体症候群の習慣性流産に対して有効という報告もあります。全世界的に行われている治療ではありませんが、使用したくなる場合があります。
管理人自身も使用経験があります。
たとえば、アスピリン&ヘパリン併用療法でも挙児に成功しないことがあるのですが、そのような場合には、柴苓湯を使用したくなります。


さて、上記のような治療によって挙児に成功した場合にも、その後の治療をどうするかという問題があります。
長くなりますので、今回の記事はここまでにさせていただきますが、機会があればまた記事にさせていただきたいと思います。


なお、抗リン脂質抗体症候群のリンク集(← クリック)からも、関連記事をご覧いただけます。



(続く)

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  • 2017.08.02 Wednesday
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